その日は朝から仕事が落ち着いていて
自分で設定している売上目標=マイノルマの達成を諦めかけていた時、
都内から長野県までの仕事が入った。
一気にマイノルマを達成しウキウキ気分で中央高速を走る。
無事に配送を終えると時間は20時になっていた。
マイノルマも大幅に超えていたのでそこで仕事を上がった。
あとは帰るだけなので特に急ぐ必要もない。
せっかく長野県まで来た事だし、ちょっとツーリング気分を味わおうと思い
来た時は違う、山道ルートを通って帰る事にした。
するとだんだん道が細くなってきて街灯もなくなり舗装も傷んでいる。
路面には折れた草木が散乱し荒れ放題。
不安になって停まって地図を見てみると道は合っている。
地図を見ていたライトを試しに消したら本当に真っ暗になった。
再びライトを点灯すると、前方に何かの気配。
黒い大きな影が動いている。
恐らく自分の背丈より大きい影。
目を凝らして見てみると鹿ではないか。
中学の修学旅行で行った奈良の鹿公園に居るような
あんなかわいい小鹿ではなく、
立派な角を生やした、まるで馬のように大きな野性の鹿である。
やべえ襲われたらどうしよう!と身構える俺を、
まさにシカトして林の中に跳ねていく鹿。
デカイのに俊敏なその躍動感。
野生生物の素早い動きに俺は感動した。
もっと見たい!
と思ったがいやちょっと待て。
俺は普段から「かもしれない運転」を心がけているプロライダー。
こんなデカい鹿がいる山なら、
ひょっとしたらグリズリーみたいな凶暴な熊が出てくるかもしれない。
熊が出てくる「かもしれない」事を予測しUターンし
来るときの道を戻って帰ったのでした。
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