私がソクハイに入った30年前は、バイク用の防寒服というものは
あまり一般的とは言えなかった。
全くなかった訳ではないが、当時の稼ぎにとっては目の飛び出るような
価格だったため、とても手がでなかったのである。
周りを見ると、スキーウェアで凌ぐ者、新聞紙を巻く者、
女性もののストッキングをこっそり履く者、
足の指の間に唐辛子を塗る者・・・
いや、決して冗談やウソを並べている訳ではない。
自分の当時の冬の装備と言えば、とにかく『持っている衣服を全て着る』。
最高で12枚(上半身だけで)着込んだ。
こうなるとゴーストバスター(最初の)に出てくるビバンダムみたいなもので、
後方確認などできない。後ろを向こうにも向けないのだ。
重さと締め付けで肩こりもすごかった。
下半身は流石にそこまでは着ないのだがそれでも明らかに「着膨れ」状態。
トイレなど行こうものなら、20分は出て来れない有り様だった。
数年すると、「フリース」なるものが出てきた。
同じ営業所の所員が勢い込んで買ってきた。
今の製品に比べればペラペラのちゃちなものだったが、当時は値段も高く、
しかし今までの枚数だけの対策に比べたら信じられないぐらいの暖かさだった。
慌てて自分も購入。
やっと首が回るようになった(本当に)。
次に革新的だったのは、「オーバーパンツ」
最初に出回ったものは風避け程度で保温性など全くなかったが、
それでもそれまでの着込みに比べれば運動性も確保でき、
格段に暖かく感じた。
また、この頃になるとバイクブームも手伝って、用品も様々なメーカーから
競うように色々な商品が出されるようになった。
奮発して万単位の「オーバーパンツ」を購入したところ、
流石に保温性も抜群で、びっくりするほど暖かかった。
結局5~6シーズン使用したと思うが、最初はむしろ暖か過ぎて殆ど着なかった位だ。
ソクハイの制服もかなり進化した。
最初の頃こそ丸めるとポケットに入ってしまうような薄手のものだったが、
今の冬ジャケットはハーフコート仕立てでインナー付き。
防風性もかなり高く、その下に着るものはかなり少なくできる。
ちょっとした外出なら、安いプライベートジャケットよりよほど暖かい。
今の自分の装備は、重ね着しても上5~6枚。下も3~4枚程度か。
この30年で、かなり学んだかもしれない。
基本はレイヤード、アンダーとミドルレイヤーとアウターの組み合わせで、
空気の層を間に作り、ゴアテックスや吸湿発熱素材など、
薄くても暖かい生地が色々ある。
冬ジャケットとインナーを着れば、あとはこれらの組み合わせで
ほとんどなんとかなってしまう。
運動性も高く、汗をかいても直ぐに吸収して暖かさに変わる。
勿論首も、腕も、足も回せる。
なんとありがたい世の中になったものか。
30年前の12枚重ね着した自分に見せてやりたい。
昨年末、なんと会社から全配送員が冬装備補助金をいただいた。
かなり高額だったので、皆いつも自分が買う値段より
ひとクラスは上の良い物を選んで買っていたようだ。
勿論私自身も。
おかげさまで、いつにもまして今年の冬は暖かい。
軽くて快適。
勿論、首はちゃんと回る。
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